遠山川支流・奥燕沢

2011年8月4日(木)〜5日(金)
L:酒屋、川村



8月4日(木)
当初の予定では易老渡に車を駐車する予定であったが、満車であったため、便ヶ島で駐車することに。
ここから、西沢渡までは徒歩で30分ほど。
ここから入渓し、西沢沿いに下降し東沢を遡上して燕沢の分岐に至った。
しかし、これはあまり効率的ではないので、入渓点は西沢渡を越えて、もう少し上部から行った方がよい。

1、燕沢入渓
入渓すると間もなくゴルジュとなるが、ここは通過できない。
通常、その少し手前で高巻くのであるが、付近に岩魚の潜んでそうな淵がいくつかあったので、竿を出してみることに。
間もなく、1匹の大イワナがかかるが、惜しくもばらしてしまう(逃がした魚は大きかった・・・!?)。




2、9寸イワナ
気を取り直し、もう一度その場所で竿を出すと、またもや竿が大きくしなった。 引きが強く、簡単には取り込めない。
慎重に手元に引き寄せると、尺には一歩及ばないものの、丸々太った見事なヤマトイワナだった。

 


3、イワナの胃の中
釣ったイワナの胃の内容物を調べてみた。そこのイワナが実際に何を食べているかが分かる。
カナブン、ハチ、クモ、植物の根っこ?!のようなものまで・・・。
餌に見えるものであれば、何でも貪欲に食しているようだ。




4、高巻き
この箇所の高巻きは、ゴルジュ直前で行うのではなく、もう少し手前の緩傾斜滞から登った方が効率的である。
上部には古い伐採用の高巻き道があり、これを利用する。
尾根を廻り込むと赤札、踏み跡もあり、これを辿っていけば、そのまま沢へ下降できそうなのだが、あまり賢明ではない。
赤札に沿って急な尾根を下ると、沢への下降点が崖となっている。
懸垂下降も可能であるが、沢まで高度があり、下降点もきわどい位置にあるため、
ここはもう少し手前の緩傾斜滞から下降すべきであろう。
地形的判断をせず、盲目的に赤札に頼ってしまっていた。
遡行者としての未熟さを痛感せざるをえない。




5、奥燕沢の分岐からゴルジュ滞へ
高巻きを終えると、そこが奥燕沢との分岐となっている。
進むにつれ、だんだんと陰鬱な雰囲気となり、傾斜もきつくなる。
その先に、本日の核心部のゴルジュ滞が待っていたのだが、ここが悪かった!!
日本登山体系によれば、この箇所について特筆されていないためあまり気に留めていなかったのだが、
実際には、
・泳ぎ2回
・際どい”へつり”からの小滝登攀
・厳しい高巻き
を強いられた。しかも、そこは井戸の底のような陰鬱な雰囲気が漂っており、
寒く、暗い・・・(我が会には、そういうところを好んで行く変態(他とは生態が異なるという、意味)もいるが・・・)。
水量が多かったことも一つの理由として考えられるが、いづれにしても、簡単には抜けられる箇所ではない。
肉体的疲労だけでなく、寒さと緊張も加わり、このゴルジュを越えたときには心身ともに、くたくたになっていた。

 


6、ゴルジュ上部
ゴルジュを抜けると、その先は明るい単調なゴーロとなる。
地獄から這い上がってきた感じ・・・。お日様に感謝!!
気持ちにも少し余裕が出てきたので、この辺りでもう一度竿を出してみることに。 すると立て続けに、良型のイワナが2尾上がる!!ともにきれいなヤマトイワナである。
ちなみに、中日本でよくみられるニッコウイワナとの見分け方は背部の乳白色斑点の有無で、
ヤマトイワナには、これが皆無かほとんど見られないのが特徴。
ヤマトイワナの生息域は年々減少しているそうで、理由は砂防ダム設置などによる魚の移動阻害→自然増殖・回復の阻害が原因のようだ。
沢登りに加え、魚を釣り、それを食す。沢殺生などと揶揄されながらも、
そうした古くから山師達が行ってきたことをトレースすることで、少し違った観点から自然に目を向けることができるようになる。

      


7、ビバーク・夕食
遡行予定は右俣であるが、1日目は左俣との分岐(二股)までで行動を終了し、
ここでビバークすることにする。写真は本日釣れたイワナのお刺身。
他にも、塩焼き、油いためなどで食したが、いづれも美味。ほどんど捨てるところはない。



〈タイム〉
便ヶ島8:30-西沢渡9:00-燕沢分岐9:30-奥燕沢分岐12:00-ゴルジュ滞13:00-二股18:00


8月5日(金)
二股から先は、ほとんど沢通しで遡行することが可能であるが、水量が多いと厳しい高巻きを要求される。
沢全体の傾斜もきつく、体力的にも消耗する。
しかし、一歩づつ歩みを進めれば確実に稜線に近づく。
昨日とは異なり、確実に高度を稼ぐことができた。
最後の詰めは、茶臼岳と2554m峰とのコル付近に上がってくる。
稜線に上がってきたときには、周囲の雄大な景色が一望でき、感慨にふけってしまった。
その後は登山道を利用し下山する。なんと快適な道だ!!
しかし、下山の行程も長かった。
やっとの思いで便ヶ島に到着したころは、辺りは真っ暗であった。
反省材料の多い遡行であった。問題点を一つ一つ克服し、今後に生かしていきたい。

〈タイム〉
二股5:30-稜線13:30-易老岳16:00-易老渡19:30-便ヶ島20:00


奥燕沢周辺の沢では、いままでに池口沢、易老沢、燕沢と遡行をしてきたが、
この沢はその中では最も難易度が高いと思われる。
今回、二股から上部は右俣を遡行したが、これを左俣にとれば燕ノ大滝(20m)、
更なるゴルジュが待ち受けており、よりグレードの高いものになるであろう。
「寒く」「暗い」「井戸の底のような」ゴルジュを好む異次元ファンにとっては、
お手ごろ(むしろ快適?!)でお勧めかもしれない。

以上。