白馬乗鞍・栂池周辺
1月4日(木)〜7日(日)
メンバー:花里、ヤマメ、池田T


1月4日(木):晴れ

栂池高原スキー場トップより林道沿いに入山。積雪
は例年に比べ少なめ。途中、1/5に行動予定のヒヨ
ドリ南面の状態を確認するが、藪が雪で埋没してお
らず、滑走可能な状態ではない。ベースとなる、自然
園まではアバランチ・パスとなるようなポイントはなく、1
ピッチで上がる。

ベースキャンプは冬季は閉鎖されているロープウェイ山
頂駅下にはる。ここであれば、後日天候が悪化しても
その影響を避けることができる。

設営を終えると、周辺にて積雪の安定性をチェック。
【クラス1】周囲に雪崩の痕跡は確認されず。
【クラス2】雪面より10cmの位置に、CTM15@RP、25
cmの位置にCTH25@RP の層が検出された。破断面
は一応できたもののスライドしないタイプ(RP)であった。
【クラス3】無風、快晴。表面に前日の降雪による10cm
前後の新雪。

詳細については添付資料を参照
(尚、プロファイルの見方については、
http://nadare-net.jp/snowbbs/00_/を参照)。
複数個所で確認すると、部分的には内部で融雪があ
りもろくなっている場所もあるようであったが、全体の積
雪のコンディションは安定化に向かっているようである。

続いて、ビーコン埋没の発見、操作方法などを念のた
めに確認。ごく当たり前の操作であるように感じられた
が、離れたレンジ、あるいは埋没地点直下での捜索で
不明瞭なシチュエーションもあった。
ビーコンの反応特性や、埋没地点付近での十字法に
よる範囲の絞込み等は、やはり事前に確認しておく必
要がある。

一連の確認を終えると、天狗原に向けて出発。既に
明瞭なトレースが付いており、登行は快適。入山者
は多いようである。
天狗原に到達すると、ドロップポイント付近で再度ピッ
トテストを行う。が、ピット作成過程でスノーソーが凍結
しショベルのシャフトからはずれなくなるトラブルも発生。
対策が必要である。尚、評価結果は以下の通り。

【クラス1】周囲に雪崩の痕跡は確認されず。
【クラス2】雪面より10cmの位置に、CTM18@RP、60
cmの位置にCTH23@RP の層が検出された。当初予想
していた過去の降雪の様子が、そのまま表れている。
【クラス3】無風、快晴。表面に前日の降雪による10cm
前後の新雪。

概ね安定していると判断。オープンバーン滑走も可能で
あるが、制限された区域をスキーコントロールでくぐり抜け
ることを目的に、あえて林間コースへ。

登行してきた尾根からオープンバーンを一人づつトラバー
スし、一つとなりの尾根に移動。そこから滑走を開始する。
木々の間を縫うようにして滑り降りることから確実なスキー
操作を要求される。が、新雪は比較的浅いため、スキー
技術がさほどなくとも快適に滑走することは可能であった。

自然園まで降りてくると周囲も薄暗くなり、時間的にも
終了の頃合。が、足慣らしとしては十分な滑走であった。

rindou


1月5日(金):快晴

天候は早朝より快晴。前日の予報によると、この天気は
本日いっぱいは持続する見込み。昨日のピットテストから
も積雪コンディションは安定していることから、本日の行動
は当初予定した通り、白馬乗鞍岳方面へ向かうことに。

昨日と同様、トレースを利用し天狗原経由で白馬乗鞍
岳へ向かうのだが、強い日差しとほとんど無風状態での登
りのため、暑さ対策に苦労する。

途中、白馬乗鞍岳の中腹の林間にてピットテストを行う。
結果については、添付資料を参照。傾向としては、昨日
の評価と同様であった。

山頂に到着すると、休憩をとってから滑走開始。
昨日と同様、コントロールし易い快適なオープンバーンを
ハイスピードで滑走することも可能であった(ちなみに花里
のGPSデータによると最高速90km/h over)。
一人ずつ滑走していき、前走者が安全地帯に到達するま
で、その様子を観察する。不意な雪崩、トラブルにも対応
できるよう準備するためである。
滑走に際しては、相互無線で逐次連絡を取り合い、コミュ
ニケーションをはかるように努めている。登山者と比較し、我
々スキーヤーはその行動速度が格段に速く、パーティー同士
がはぐれてしまう頻度が多くなるためである。
そのため、無線という通信機器に対しても、事故が起こってか
らの通信手段という従来の考え方対し、無線を多用すること
で事故を未然に防ぐというのが我々の考え方である。

天狗原に到達すると、そこから自然園までの滑走は昨日とは
異なるルートを選択。少し北に進路をとり、昨日滑走した尾
根の一つ北隣の尾根沿いを滑ることに。
積雪のコンディションも安定していたため、オープンバーンと林
間の間を交互に滑る。コントローラブルな雪質ではあるのだが
林間が多少狭いため、操作には気を使う。

自然園まで降りてきて、まだ時間には猶予がある。当初予定で
はヒヨドリ南面滑走であったが、昨日の観測結果から滑走は不
可能と判断。サブルートであった小蓮華山方面へ。
ルートは自然園沿いではなく、少し上がった斜面上を進んだため
急峻なアップダウンに行く手を阻まれることになる。途中で、小蓮
華山方面へ進むのを断念し、その場から適当な場所まで少し登
り返し滑走することにした(Drop point:N36°46'43.1"、E137°
48'50.7")。

この日、日が西に傾いた時間帯から、表層の雪質のみが硬化
(クラスト)する雪質に変化した。クラストした斜面の滑走には独特
のスキー操作が要求される。これに慣れていないメンバーは、その
操作に非常な苦労を強いられていた。クラストした斜面の滑走法に
ついては、以下の二点が挙げられる。

1、上体のねじりを加えながら表層の硬化層を破壊しターン導入を
  行い、スキーの反発を利用して斜滑降に移行する。
2、ターン直前にジャンプし、空中にてターン(ジャンプターン)。
  クラストの影響は受けない。

かかとの固定されていないテレマークスキーヤーは1の方法でしか対
処することができない。が、連続した操作による流れるようなターンの
完結は本来あるべき理想の姿である。
2の方法については、アルペンスキー操作ならではの方法で、あらゆる
シチュエーションで応用することができる。
山岳スキーは、雪面のコンディションが多種多様であるため、スキー
操作も様々な技術が要求される。1ターンごとに、滑走方法を変える
ということもしばしばである。山スキーにおいては山岳技術の基本をマ
スターしていることはもとより、ゲレンデにて様々な操作法を獲得して
いくことも重要である。

自然園まで降りくると、昨日と同じ時間帯。ここで行動を終了する。

白馬乗鞍岳山頂

1月6日(土):雪

昨晩より降雪があるようで、靴底貫入深度は30cmほど。降雪量は
次第に増している。そのため、当初予定していた山の神方面への行
動は中止。いったん栂の森まで下り、そこから天狗原まで登り返して
再び自然園に戻ってくるという林間周回のサブルートで行動すること
に。
ロープウェイ山頂駅直下から延びる尾根伝いに滑走を開始。
昨日までとは異なり、だいぶ深雪感が増してきたがそれでもスキー操
作は比較的容易である。しかし、全体の積雪量が少ないため、谷や
藪が完全に埋没しておらず、その処理に苦労する。
栂の森に到着すると、そこからシールを貼り一昨日と同様林道沿い
に登り返す。
成城小屋付近に到達すると、そこで小休止をとってからヒヨドリ尾根
に向けて林間を登る。稜線に出てから天狗原までは、痩せ尾根で
急峻な斜面を登行。このようなシチュエーションでは、シール登行は
非常に厳しい。急斜面、深雪、狭い林間ではスノーシューの方が
有効であると感じた。
天狗原に到達したころには、だいぶ風雪が強まってきた。そんなコン
ディションの中でも入山している他の何パーティーかを確認した。
滑走可能な適度な疎林帯まで移動し、ドロップポイント付近にて
ピットテスト。これだけ降雪があると積雪の様子が気になるところで
ある。評価結果は以下のようなものであった。

【クラス1】周囲に雪崩の痕跡は確認されず。
【クラス2】雪面より20cmの位置に、CTM20@RPの層が検出。
顕著な弱層は確認されないものの、昨日からの降雪によりウィーク
インターフェイスを形成する可能性が高い。
【クラス3】風、降雪ともに次第に強化傾向。

念のためにオープンバーンの滑走は避け、林間コースを滑る。まとま
った降雪のおかげで、やっと深雪滑走の雰囲気が出てきた。ディープ
パウダーに対し苦手意識が強い人が多いようであるが、昨日のような
クラストに比べると、その滑走は容易である。滑るというよりも波に乗る
感覚で、雪面から受ける抵抗を素直に受け止め両足のバランスと上
体の方向付けでターンが完成する。重力や抵抗に逆らうのではく、受
け止め利用するのである。「自然との一体感を追求する」これが、山
岳スキーの一つの醍醐味だ。

自然園まで降りてくると、再び昨日と同じトレースのついた尾根を天狗
原まで登り返す。ここから再び自然園に向けて滑り返すのであるが、数
を重ねるにつれ、メンバーも次第に滑走に慣れてくる。

天狗原からの2本目の滑走を終えて終了とした。降雪量は次第に多く
なり、風も強まってきている。明日の天候が心配であるが、ひとまずベー
スにて様子を窺うことに。

天狗原手前

1月7日(日)雪のち暴風雪

朝起きて、外を見ると様子が一変している。用をたしにつぼ足で外に出る
と胸付近まで埋まる。おおかたの予想で今日は撤退することが決定して
いたが、この様子ではスキー場まで辿りつくのも難儀しそうである。
準備を整えると下山開始。が、あまりの積雪にスキーを履いていても、それ
が抵抗となって思うように前へ進まない。というより、スキーでなかったらほと
んど前進不可能である。途中何度かラッセルを交代しながら、なんとか栂
池のスキー場に到達する。やれやれといった感じであった。

これだけの降雪があるとスキー場の圧雪も追いつかず、オールパウダー状態。
午後からはゲレンデにてパウダートレーニングを行った。

以上